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パリ、テキサス
Paris,Texas


制作年 1984 Scene1
邦題パリ、テキサス
原題Paris,Texas
ジャンルドラマ
時間 146分
フイルム 35mm
カラー カラー
製作国 西独=仏
製作会社ロード・ムーヴィーズ/アルゴス・フィルム/WDR/チャンネル4/プロジェクト・フィルムプロダクション
製作ヨアヒム・フォン・メンゲルスハオゼン
監督ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
脚本サム・シェパード<Sam Shepard>/L.M.キット・カーソン<L.M. Kit Carson>
撮影ロビー・ミュラー<Robby Müller>/
マルティン・シェーファー<Martin Schäfer>
編集ペーター・ブルツィゴッダ<Peter Przygodda>
音楽ライ・クーダー<Ry Cooder>
出演ハリー・ディーン・スタントン<Harry Dean Stanton>(トラヴィス)/
ナスターシャ・キンスキー<Nastassja Kinski>(ジェーン)/
ハンター・カーソン<Hunter Carson>(ハンター)/
ディーン・ストックウェル<Dean Stockwell>(ウォルト)/
オーロール・クレマン<Aurore Clement>(アンナ)/
トム・ファレル<Tom Farrell>(橋の上で叫ぶ男)/
ベルンハルト・ヴィッキ<Bernhard Wicki>(ウルマー博士)/
ジョン・ルーリー<John Lurie>(バーの男)


Scene2
■ 内容

テキサスの原野を一人の男が一心不乱に歩いている。男がガソリンスタンドに入り、氷を口にすると、そのまま倒れ込んだ。男の持ち物に、何者かがわかるものはなく、一枚の名刺から男の弟に電話することができた。男の名前はトラヴィス。4年前から失踪していた。
病院から逃げ出したトラヴィスをウォルトは追いかける。トラヴィスは口をきかないため、記憶があるのかないのか、何を考えているのかまるでわからない。自分の家に連れて帰ろうとするが飛行機に乗ることは拒絶する。仕方なく車で帰ろうとする。初めて彼が口をきいたのは、一枚の写真がきっかけだった。テキサス州にあるパリという街の写真で、そこに自分の土地を通信販売で買ったという話をしたときだ。そこで父親と母親が初めて結ばれたという。トラヴィスにとっては自分がそこで誕生したのかもしれない場所だ。
ウォルトはロサンゼルスに住んでいて、妻のアンナと共に8歳になるトラヴィスの息子ハンターを我が子のように面倒を見ている。再会したもののぎこちないトラヴィスとハンター。5年前にトラヴィス、トラヴィスの妻ジェーン、ハンター、そしてウォルトとアンヌの5人で撮影した8ミリフィルムを見たときから少しずつ二人の関係は変わっていく。学校へ迎えに行ったトラヴィスを最初は無視して友達の親の車で帰ってしまうが、次にトラヴィスがスーツを着て“父親らしい格好”をして行ったら一緒に歩いて帰って来た。
アンヌは最初はハンターをとられてしまうのではと思い不安になっていたが、ハンターの様子を見てやはり本当の親にはなれないと理解した。そこでトラヴィスに「ジェーンがヒューストンの銀行から毎月送金してくる」ことを教えた。トラヴィスは中古で車を買い、ハンターにジェーンを探しに行くと告げると、ハンターも自分も行きたいと言い出し、そのままヒューストンへ旅立った。
Scene2 毎月送金して来る日がその日だったので、そのままヒューストンの銀行に向かう。二人で見張っていると、ジェーンらしき人物がのった赤い車を見つける。二人は車を追うが不思議な建物に入る。トラヴィスはハンターを車に残して建物に入った。そこはいわば「のぞき部屋」でブースの中にはマジックミラーをつけていて、客からしか見えないようになっている。ジェーンを呼んでその姿を確認したが、トラヴィスは黙って出て行った。
翌日、トラヴィスはハンターにテープレコーダーで別れを告げて再度のぞき部屋へ行く。再びジェーンを呼び、自分の気持ちを語る。姿は見なくてもそれがトラヴィスであることを知ったジェーンも自分の気持ちを語った。最後にハンターのいるホテルのルーム・ナンバーを告げ、トラヴィスは去った。
ホテルで一人でいるハンターの前にジェーンが現れた。寄り添う二人の影を確認して、トラヴィスは夜の闇に消えて行った。

■ 感想

1982年、6年もかけた「ハメット」がようやく撮り終わることができ、「ことの次第」がヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞すると、ヴェンダースは新しい企画に取りかかった。
ヴェンダースにとって次の企画は「ハメット」のリベンジだった。まずハメット役に起用したかったサム・シェパードと共同脚本を起こすところから始まった。期するところとしては、他にもはロビー・ミュラーやペーター・プルツィゴッタといったいつものメンバーと仕事をすること、そしてライ・クーダーに音楽を依頼することである。
当初「トランスフィクション」と名付けられた原稿が二人の作業の出発点だった。シェパードが書いた「モーテル・クロニクルズ」というタイトルの物語やスケッチ、メモ集から一つの脚本を起こそうとした。が、まったく別のアイディアに基づいて脚本を書く必要があることがわかった。
脚本の原点となったのは、砂漠の何もないところからまるで湧いて出たように姿を現す一人の男である。紆余曲折を経て、砂漠で弟に発見され、やがて妻を捜す旅に出る、というように固まって来る。ヴェンダースは1983年3ヶ月かけてテキサスを旅行し、ロケハンを行う。この時撮影した写真は後に「Written in the West」という写真集としてまとめられることになる。
ジェーンには「まわり道」以来のナスターシャ・キンスキー。自分が探し出した女の子が世界的な女優になっている、それをどんな誇らしい思いでヴェンダースは眺めていたのだろうか。どんな役になるにせよ、これはもう決めてあったことだった。トラヴィスのハリー・ディーン・スタントンはサム・シェパードの分身。そうやって好きなように配役を決めて行く。
1983年9月に撮影が開始され、途中資金がはくなっってジョン・ヒューストンに金を借りたり、最後はスタッフが報酬を断念せざるを得ないところまで追いつめられたが何とか撮影を終わることができた。
そして1984年、「パリ、テキサス」は公開され、カンヌ映画祭グランプリを受賞した。「パリ、テキサス」はこの年の映画的事件となった。

この物語は三幕の舞台である。テキサスでトラヴィスが見つかってロスに行くまでが一幕。次にロスでのハンターとトラヴィス。最後にヒューストン、となる。
冒頭トラヴィスが出てくるシーン。記憶喪失なのか、痴呆なのかわからない。まさにアイデンティティを失った男が一心不乱に歩いていく、その目的地は「テキサス州のパリ」なのである。そこで自分の元が誕生したのかもしれない場所。
かつてトラヴィスは愛するあまり狂気に侵されてジェーンを追いつめる。ジェーンはハンターを産み、そのことで更に追いつめられる。トレーラーに火をつけ、トラヴィスをそのままにしてジェーンは逃げる。そして、トラヴィスは逃亡する。大切な息子を自分で育てることが出来ないと悟ったジェーンは、確かな人に預けて自分は一人になる。三つのパズルはバラバラになってしまった。
それから4年、トラヴィスは徐々に自分を取り戻していく。そして自分が原因でバラバラになってしまった母と子を再び結びつけることが自分の仕事だと理解する。そして自分は去って行く。サム・シェパード曰く「壊れてしまったのは三人の関係ではなく、トラヴィス自身の中にある。だからトラヴィスはそれを一人で見つめなくてはならない」。
私はこの三人が何故一緒になれないのか、ずっとそれを考えていて、3回目に見たくらいのときに、ようやく少し納得が行くようになっていった。今ではこの結末しかないことはよくわかっている。
「何があったのかわからない。空白のままなんだ」とトラヴィスは言う。それが何なのかわからないのなら、一緒にいてもまた同じことになってしまうと理解している。

好きなシーンはトラヴィスがハンターと二人が平行に道を挟んで歩いて行って、最後に一緒に歩いて帰るところ。二人の距離が縮まって行ったことが、よくわかる場面。次に好きなシーンは最後ジェーンの髪をハンターがなでる場面。トラヴィスは黒髪ですから、ハンターが何故金髪なのかというと、ジェーンに似ているからなのです。ということをハンター自身が確認しているような、そんな仕草。またこれが髪質がたまたまだけど似ている…。

この映画は映画が映像芸術であることを、私に教えてくれた初めての映画なのかもしれない。黒いスーツに赤い帽子。テキサスの原野。映画音楽とは、これだ!というスライドギター。観客がほほえんだり泣いたりするメロドラマであっても、作家がやりたいことを貫いた映画。そんな映画だった。

うーん。結局、まだまだ言葉にはできない…一生できない気がするな。


1985年9月7日 フランス映画社配給
1984年カンヌ映画祭グランプリ(パルムドール)&国際映画批評家大賞&国際カトリック映画事務局賞
1984年イギリス・アカデミー外国映画再収集監督賞&イギリス批評家協会作品賞・主演男優賞受賞
1984年フランス映画批評家協会賞受賞
1984年ドイツ撮影賞(劇映画部門)
1985年バイエルン映画撮影賞
1985年連邦映画賞銀のフィルム賞
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