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緋文字
Der Scharlachrote Buchstabe


制作年

1973

Scene1
邦題緋文字
原題Der Scharlachrote Buchstabe
ジャンルドラマ
時間 90分
フイルム 35mm
カラーカラー
製作国西独
製作会社PIFDA/西ドイツ放送局(WDR)/エリアス・ケヘレタ・プロ
原作ナサニエル・ホーソーン<Nathaniel Hawthone>
製作ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>/
トーマス・シャモーニ<Thomas Schamoni>
監督ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
脚本ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
撮影ロビー・ミュラー<Robby Müller>
編集ペーター・ブルツィゴッダ<Peter Przygodda>
音楽ユルゲン・クニーパー<Jürgen Knieper>
出演ゼンダ・ベルガー<Senta Berger>(ヘスタ・プリンヌ)/
ハンス・クリスティアン・ブレヒ<Hans Christian Blech>(チリングワース)/
ルー・カステル<Lou Castel>(デムスデール)/
イェラ・ロットレンダー<Yella Rottländer>(パール)/
リュディガー・フォーグラー<Rüdiger Vogler>(水夫)


■ 内容

17世紀後半のアメリカ新大陸、大西洋岸のピューリタンの村に一人の旅人がやって来る。村はちょうど年に一度開かれる裁判の日だった。村の中央広場のさらし台の上に若い女性ヘスタが立っており、彼女の衣服は胸のところに「A」という深紅の文字が縫いつけられていた。これは姦通(adultery)の頭文字だった。
旅人はチリングワースという医者で、以前ヨーロッパではヘスタの夫だった。ヘスタが不義の子を産み、その子の父親の名を明かすのを拒んだため、裁判によって村から追放されて町の外の小さな小屋に住むことを余儀なくされ、「A」という文字をつけて毎年一度このような辱めを受けるのだった。だが、彼女の態度には卑屈なところなどみじんもなく、むしろその「A」という文字を誇りに思っているようだった。
セイレムの町にイギリスからの船が着いた。ヘスタは牧師のデムズデールに娘のパールと3人でヨーロッパへ逃げようともちかける。デムズデールは罪を告白してからでないと行けないと言う。町の人々の前で自分の罪を告白すると、崩れ落ちる。新しい知事はことを公にしたくないため、彼を殺害する。ヘスタとパールを載せた船はイギリスへ出帆した。


■ 感想

ホーソーンの「緋文字」が原作だが、それをタンクレッド・ドルストとウルスラ・エーラーが脚色したものを下敷きにして、脚本化している。
父親は誰だ?という謎は実は当初から明らかになっており、それよりは「何故そこまでして隠すのか?」という疑問を引っ張って、最後まで退屈せずに済んだ。自然環境の厳しさが画面に全面に現れているので、新大陸に来たばかりの清教徒たちの宗教や戒律の厳しさを納得させる効果がある。全般的に暗く、寒そうな映像が多くて非常に息が詰まる。そのためか、明るい海の映像が映ると、その開放感にほっとさせられる。ロビー・ミュラーの赤は、
姦通の証である赤い「A」の文字を胸につけ、堂々とした面立ちで父親の名を隠し続ける、自己犠牲の固まりのような主人公が実は非常に強い情熱の持ち主で、秘密の父親と旧大陸へ逃げようと誘うところで、ようやく何故隠し続けていたのかがわかる。父親の方は終始苦しんでいるだけで、その苦しみから解放されることの方が、本来の義務を果たすことより重要だという、なんだかピューリタンの窮屈さだけが目立ってしまった。
何がテーマだったのか、まったくよくわからない作品だが、本人が語るところによると、それは当初「アメリカで暮らすヨーロッパ人」だそうだ。なるほど。それなら理解ができる。これは一番最初の「アメリカで暮らすヨーロッパ人」だから。まったく失敗しているが…。

ヴェンダース自身、この作品は失敗だと認めている。しかし非常に良い教訓を残したようである。

1.時代劇は取らない
時代考証などやったことがなくて面倒くさい。余計な時間をとられてしまう。自分はピンボールマシンやジュークボックスがないと映画を撮る気にならない。それは自分と自分の時代に対する強い興味が映画を撮る情熱の源だから、ということに気づいた。

2.プロデュースは自分でやる
映像作家協会、スペインのプロデューサー、ドイツのテレビ局、スペインの配給会社の共同製作という、とんでもなく人数の多い製作で収集がつかず。

3.キャスティングは自分で。できるだけマイナーな俳優を
上記のような製作者からキャスティングにも口を出されて、自分も気に入らない上に当の役者もやる気がないし、なんだか盛り上がらない撮影現場だったようだ。更に国際俳優を押しつけられたが故にわざわざ四カ国語で撮影するという余計な手間のかけよう。

2と3については、ここで痛い目にはあったが、やはり資金が潤沢になる等の事情もあり、なかなか自主製作だけというわけにはいかない。だが、たとえば「ハメット」のコッポラのときなども苦しいながら、戦って、己の主張を通す方法を身につけていくのだが…。

子役のイェラ・ロットレンダーがかわいい。おなじみのリュディガー・フォーグラーがちょい役の水夫役で出ている。この二人が仲良くなって、それを見ていたヴェンダースが次回作「都会のアリス」を撮る気になった、という話である。


1984 東京ドイツ文化センター ヴィム・ヴェンダース特集
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