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ランド・オブ・プレンティ
The Land of Plenty


制作年 2003 ランド・オブ・プレンティのチラシ
邦題 ランド・オブ・プレンティ
原題Land of Plenty
ジャンルドラマ
時間 114分(カナダ版123分)
フイルム -
カラー 独=米
製作国リバース・アングル・インターナショナル/InDigEnt
製作会社トランス・パシフィック・フイルムズ/アルゴス・フィルム/ヴィレッジ・ロードショー/ロード・ムーヴィーズ
製作製作総指揮:ペーター・シュワルツコフ<Peter Schwartzkopff>/ヨナタン・ゼーリング<Jonathan Sehring>/キャロライン・カプラン<Caroline Kaplan>/ジョン・スロス<John Sloss>/
製作:イン・アー・リー<In-Ah Lee>/サムソン・ムッケ<Samson Mucke>/ゲイリー・ウィニック<Gary Winick>/ジェイク・アブラハム<Jake Abraham>
監督ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
脚本ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>/マイケル・メレディス<Michael Meredith>
撮影フランツ・ルスティヒ<Franz Lustig>
編集モリッツ・ラウベ<Moritz Laube>
音楽トム&ナクト<Thom & Nackt>/音楽監修:リンダ・コーエン<Linda Cohen>
出演ミッシェル・ウィリアムズ<Michelle Williams>(ラナ)/
ジョン・ディール<John Diehl>(ポール)/
ション・トウブ<Shaun Toub>(ハッサン)/
ウェンデル・ピアース<Wendell Pierce>(ヘンリー)/
リチャード・エドソン<Richard Edson>(ジミー)/
バート・ヤング<Burt Young>(シャーマン)/
バーナード・ホワイト<Bernard White>(ヨセフ)
公式サイト http://www.land-of-plenty.de/(英語);http://www.landofplenty.jp/(日本語)


■ 内容

アメリカで産まれた後、宣教師の父に連れられて10年をアフリカで、10年をイスラエルで過ごした女の子が父の友人である牧師の伝導所で牧師の活動を手伝うために、ロスにやって来る。彼女にはほかに大切な目的があり、それは亡くなった母の兄であるポールに母から託された手紙を渡すことだった。
ベトナム戦争の枯れ葉剤の後遺症に悩むポールは、ロスで監視カメラつきのバンに乗り、街中をうろついている。自分ではアメリカをテロの脅威から守っているつもりのようだ。廃品回収なのか、自動車工場なのか判別しないが、同じようにちょっとおかしな部下と一緒になって様々な場所の水質検査やアラブ人の様子を探っている。
ポールに連絡を取ろうとするラナだが、そんなラナの様子を警戒しながら見守っているポール。二人が出会うのは、伝導所の前で謎のアラブ人が射殺される事件が起きた時だ。殺された男、ハッサンの身元がわかり、ラナは伝導所の牧師や伯父の協力を得てトロナというロス郊外の街に住むハッサンの兄のところへ遺体を届けようとする。
ラナとポールの旅が始まる。

■ 感想

アメリカに住むドイツ人が、2002年のロスで感じたことを、そのまま率直に映画にした。そんな感じの映画。あまり大げさでもこねくり回してもおらず、思うがままを表現した、悪い意味ではなく軽い映画なので、あまり身構えずに見ることができる。
ヴェンダースの「待ち時間映画」と私が勝手に名付けているのだが、これはまさに「待ち時間映画」なんである。古くは「ハメット」待ち時間に撮った「ことの次第」「ニックス・ムービー」、「夢の涯てまでも」の待ち時間に撮った「ベルリン、天使の詩」、「ミリオンダラー・ホテル」待ち時間に撮った「エンド・オブ・バイオレンス」。それにつけても16日間の撮影期間は今の映画作りからすると、自主映画のような短さだ。こういう短期間の低予算映画の方がヴェンダースはいい作品が撮れると私は信じている。

さて、本編について。最初は一人でアメリカを守っている気になっているポールの滑稽さに苦笑させられるが、次第に苛立ちを覚えて来る。哀れな、と同情するか滑稽だと笑うか、そういった気持ちよりは、その誇大妄想狂ぶり、自意識過剰ぶりに、実際こんなイカれたアメリカ人がいるのではないかと思わせ、愛国心の強い、狂信的なアメリカ人が根っから嫌いな一日本人としては、本気で腹が立ってくる。武器オタクとか、サバゲー好きもかなり本格的なんだろうな。本当にあんなスコープ持っていそうだ。何しろ実際に銃だって買えてしまうところが日本の武器オタクの比じゃあないのかもしれない。ポールの携帯の着メロが「星条旗よ永遠なれ」に至ってはうんざりする。もちろん、それは監督の狙い通りなんだろう。
ラナも現代のアメリカ人の若者の基準からすると、少しおかしな女の子だ。わざわざダウンタウンで貧しい人たちを助けようなどという発想はあまりないのでは?と思ったのだが、宣教師の娘でイスラエルから来ているのだから、それも納得がいく。むしろ、彼女が普通の女の子ではないと思うことが、そもそもおかしなことなんじゃないかという気にさせられる。心根の優しい素直でいい子が、アメリカ人にいるのか?。
9.11のテロがポールのトラウマを呼び起こし、なんとかかんとか過去を忘れ、現実と折り合って暮らしていたポールがイカれた行動を起こす。9.11のテロで歓喜する普通の人々を見たラナがアメリカにやって来た理由は、9.11で亡くなった人たちの本当の声を聞くため。アメリカ人が9.11によって起こした行動をヴェンダースは心から憂いていたに違いない。この映画は憎しみを頭の悪い指導者(ブッシュ)に利用され、本来なすべきことを忘れたアメリカ人への警鐘なんだろう。

相変わらずヴェンダース独特の「見ること」へのこだわりが、ポールの改造バンから見て取れる。それに相変わらずレコーダーへ一人語りする男がいる。また、星条旗が大きなモチーフになっているが、この国旗の先についている翼のついた天使が「さすらい」の一シーンを思い出させる。それと、「ミリオンダラー・ホテル」のビルの屋上から見たロスの風景や「リスボン物語」の監督の家から見た川沿いの風景を彷彿とさせる、伝導所の屋上からの風景がいい。今回、低予算だけあって、あまりカメラの台数が多くないので、じっくりと映像美を楽しむというわけにはいかなかっただけに、この屋上のシーンが際立った。
そういえば「トロナ」という街の名前はどこかで聞いたことが‥と思っていたら、ロスから街までの風景を見てすぐに思い出した。「10ミニッツ・オールダー」の舞台にヴェンダースが選んだ場所だ。ロスとラスヴェガスの間にある、なんの変哲もない寂れた砂漠の中野工業地域なのだが、その寂れ方がヴェンダースの興味を引いたのだろうということは、とてもよく理解できる。アメリカに産まれたアメリカ人だったら、絶対におもしろがらないだろう。私も日本人なので、よくわかる。ああいうところが「ああ、アメリカっぽい」と感じてしまうのだ。

ミッシェル・ウィリアムズはなかなかいい。キツイ顔だが、ちょっと表情を変えるとかわいらしい。ミラ・ジョボヴィッチといい、ヴェンダースはエキゾチックなキツい目の女の子が好きらしい。そう言えば昔からそうなんだが、もう実際に自分で手をつけないところが、大人になったなぁ(笑)という感じ。

本当は、ヴェンダースがアメリカを愛して、心から今の憂いて作った作品なのだが、良心的な、あるいは知的なアメリカ人以外はきっと見たくない映画なんだろうな。自分の愚かさを突きつけられているようで、本当にイヤじゃないかなと思う。


2005年10月22日 アスミックエース配給
2004年ベネチア国際映画祭出品作品
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