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ソウル・オブ・マン
The Soul of a Man


制作年 2003 Poster
邦題 ソウル・オブ・マン
原題The Soul of a Man
ジャンルドキュメンタリー
時間 104分
フイルム 35mm
カラー カラー
製作国
製作会社バルカン・プロダクションズ/リバース・アングル・インターナショナル
製作製作総指揮:マーティン・スコセッシ<Martin Scorsese>/ポール・G・アレン<Paul G. Allen>/ウルリッヒ・フェルベルグ<Ulrich Felsberg>/ジョディ・パットン<Jody Patton>/製作:マーガレット・ボッド<Margaret Bodde>/アレックス・ギブニー<Alex Gibney>
監督ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
脚本ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
撮影リサ・リンズラー<Lisa Rinzler>
編集マチルダ・ボヌフォア<Mathilde Bonnefoy>
出演

ローレンス・フィッシュバーン<Laurence Fishburne>(ナレーター)/
キース・B.ブラウン<Keith B. Brown>(スキップ・ジェイムス)/
クリス・トーマス・キング<Chris Thomas King>(ブラインド・ウィリー・ジョンソン)/
ジェイムズ・ヒューズ<James Hughes>(H.C.スペアーズ)/
デビッド・ヒューズ<David Hughes>(アート・ライブリー)/
シャイン・ティングル<Shyane Tingle>(録音技師)/
ジョイ・ブラッシャーズ<Joy Brashears>(秘書)/
スキップ・ジェイムス<Skip James>/
J.B.ルノアー<J.B. Lenoir>/
ベック<Beck>/
T-ボーン・バーネット<T-Bone Burnett>/
イーグル・アイ・チェリー<Eagle Eye Cherry>/
ルー・リード<Lou Reed>/
ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン<The Jon Spencer Blues Explosion>/
カサンドラ・ウィルソン<Cassandra Wilson>/
ボニー・レイット<Bonnie Raitt>/
ニック・ケイヴ&バッド・シーズ<Nick Cave and the Bad Seeds>/
ロス・ロボス<Los Lobos>/
バーノン・レイド<Vernon Reid>/
デビッド・バーンズ& ジェームズ・ブラッド・ウルマー<David Barnes & James "Blood" Ulmer>/
シェメキア・コープランド<Shemekia Copeland>/
アルヴィン・ヤングブラッド・ハート<Alvin Youngblood Hart>/
ガーランド・ジェフリーズ<Garland Jefferys>/マーク・リーボー<Marc Ribot>/
ルシンダ・ウィリアムス<Lucinda Williams>



Scene
■ 内容

1977年、ブラインド・ウィリー・ジョンソン(1902~1947)の「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」は、ボイジャーに乗って宇宙へと旅立った。すでに亡きジョンソンが遥か彼方から地球を見つめ、伝説的な存在となっているブルースマンたちの人生を語る。当時の映像やセミ/ドキュメンタリー映像、ライブ映像や現在のミュージシャンたちがカバーしたライヴ映像でつづる。
ウィリー・ジョンソンは幼少の頃灰汁が目に入り失明。街角や教会で神への賛歌を歌っていた。通常言われるゴスペルとブルースの間の境を問題とせず、神への賛歌にブルースの形式を持ち込んだのである。彼の歌がレコーディングされ、名声を得た後もずっと街角での歌を続けていた。
1931年、スキップ・ジェイムス(1902~1969)は地元のコンテストに合格し、パラマウント・レコードでレコーディングする権利を得る。それは18曲を一気に録音したという伝説のレコーディング。その報酬として実費の40ドルで印税を選んだ。だが、時は大恐慌の時代。印税は手に入らなかった。そこでバプティストの牧師となり、消息を絶っていた。
ブルース研究家がスキップ・ジェイムスを発見したのは1964年のことだった。そして「ニューポート'64」のライブに引っ張り出す。30年以上ものブランクをものともせず、17,000人もの聴衆を魅了する。だが、このコンサートの時、すでに彼はガンに侵されていた。クリームのカバーによって得た印税で晩年の入院費と生活費をまかなったという。恵まれない晩年ではあったが、それでも翌年のニューポート65にも出演し、幻の18曲と新曲を含め録音することができたのは、まだしも幸いだった。
もうひとりの伝説のブルースマンは、ソングライターの草分けJ.B.ルノアー(1929~1967)。シマウマ柄の燕尾服がトレードマークだった彼のブルースは精神的、宗教的なテーマを歌うものが多く、当時の社会問題に触れた曲も作った。彼の姿を短篇映画として残したシーバーグ夫妻のインタビューと映像で彼の姿をさぐる。ルノアーは38才の若さで死んだ。交通事故だったが、病院は適切な処置を怠ったとも言われる。彼の最後の仕事は皿洗いだったという。

■ 感想

いつの間にか音楽映画の巨匠のようになってしまったヴェンダース。いい映画を撮っていることだけは確信できて、それは嬉しいのだが、音楽映画のドキュメンタリーの人だと思われても困るというか、それは本業ではないと思いたい。
ブルース100年を記念し、「The Blues Movie Project」と称してマーチン・スコセッシの総監督のもと、7本の映画が製作された。その中の1本をヴェンダースが撮っている。対象となったブルースメンはブラインド・ウィリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムス、J.B.ルノアーの3人。私はブルースは全然わからない。例えばクリームの曲でスキップ・ジェイムスの名前を知ってたりする程度。だが、それでも充分楽しめた。その点に関しては「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」を見たときにも同じように感じた。これがただのライブ映像だったらばそうはいかない。だから、そこら辺が監督の力量というものだと思う。
「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」は本当に素材がよくて、ハバナの陽光の明るさに対してストレートに難しく考えず撮ったことが勝因だったと思う。元気な老ミュージシャンたちがまだ存命でインタビューにも応えてくれ、その上ニューヨークやアムステルダムでライブが出来た。
ところが今回の対象となった3人のブルースメンは亡くなっているため、どうやって再構築していくのか。この辺のヴェンダースはさすがだと思う。古い手回しカメラで撮影した。デジタルカメラで撮影されたクリヤな映像を、まるで当時のドキュメンタリーのような古くさい映像に加工。CGだけではこの味わいは出せまい。何しろブラインド・ウィリー・ジョンソンは写真すら残っていないのだ。それを知らなければ盲目の彼が街角で伴奏をつけてブルースを歌う姿を見て、ドキュメンタリーだと思う人がいても、それは罪にはなるまい。
そしてスキップ・ジェイムスも同様。1964年のニューポート・ジャズ・フェスティバルの時の写真は残っている。だが、幻に終わった1931年のレコーディング風景は役者を使っての再現フィルムである。イヤリングだけが色づけされた赤に、ちょっとした茶目っ気を感じる。
J.B.ルノアーは幸いにして演奏風景をカラーとモノクロで撮影したスウェーデンの夫婦がいた。それを発掘したことだけでも、ヴェンダースはブルース史に貢献したと言えるだろう(もちろん、この映画自体が貢献しているのだが)。
3人のブルースメンはスタイルも音楽性も生きた時代も異なるが、ヴェンダースにとってはブルースと言えば彼らなのだろう。その生涯を追う作業は実に楽しそうだ。ブエナビスタのときはキューバのミュージシャンに引き合わせてくれたライ・クーダーに謝辞を捧げていた。今度はいい映画を撮影する機会に恵まれたことをスコセッシに感謝しているだろうか。


2004年8月28日 東宝東和配給
2004年カンヌ国際映画祭出品
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