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都会のアリス
Alice in den Städten


制作年 1973 Scene1
邦題都会のアリス
原題Alice in den Städten
ジャンルドラマ
時間 110分
フイルム 16mm
カラー モノクロ
製作国西独
製作会社PIFDA/西ドイツ放送局(WDR)
製作ヨアヒム・フォン・メンゲルスハオゼン
監督ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
脚本ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>/
ファイト・フォン・フェルステンベルク<Veith von Fürstenberg>
撮影ロビー・ミュラー<Robby Müller>/
マルティン・シェーファー<Martin Schäfer>
編集ペーター・ブルツィゴッダ<Peter Przygodda>
音楽CAN
出演リュディガー・フォーグラー<Rüdiger Vogler>(フィリップ・ヴィンター)/
イェラ・ロットレンダー<Yella Rottländer>(アリス・ヴァン・ダム)/
リザ・クロイツァー<Lisa Kreuzer>(リザ・ヴァン・ダム)/
エッダ・ケッヒェル<Edda Köchl>(ニューヨークの女)


Scene2
■ 内容

ドイツ人ジャーナリスト、フィリップ・ヴィンターは、旅行記執筆の依頼を受けアメリカを旅している。多くの写真を撮ったが、旅行記が書けない。車でアメリカを見て回るが、同じような風景、似たようなモーテル、モーテルの部屋のテレビに映る番組。すべてが薄っぺらい。諦めてニューヨークに行ってエージェントに写真を見せるが、エージェントは旅行記が必要なのに写真だけではと非難される。仕方がなくドイツに戻る決意をする。
空港ではドイツへの便がストで運行停止しており、翌日のアムステルダム行きのチケットを取る。そこから陸路ドイツへ向かうよりほかない。ドイツ人女性リザと9歳の娘アリスと出会う。リザは結婚してニューヨークに来たのだが、ちょうど離婚したばかりで意気消沈している。二人のためにホテルをとってやり、自分は女友達のところへ行くが、まるで人の話を聞いていないヴィンターに愛想をつかして「あなたを助けることはできない」と泊まることを断られる。仕方がなく、アリスとリザの部屋へ行って泊めてもらう。
翌朝、突然リザが姿を消してしまう。残された置き手紙に「エンパイヤ・ステート・ビルディングに13時」に待ち合わせとある。ところが彼女は現れない。ホテルに戻ると「先にアムステルダムに行って欲しい。2日後に追い着くように行く。」という置き手紙が。ニューヨークに居続ける金のないフィリップは仕方なくアリスを連れてアムステルダムに飛ぶ。
アムステルダムで二人はリザの到着を待つ。その間アムステルダムを二人で観光したりするが、結局リザは来なかった。アリスはフィリップに見捨てられそうになっていることを察知し、トイレの中にこもって出てこなくなってしまう。フィリップはアリスとおばあさんの家を一緒に探すはめになり、二人の奇妙な旅が始まる。

■ 感想

ロードムービー3部作スタート。「緋文字」は作品としては失敗に終わったが、この作品を生みだすきっかけになった。フィリップ・ヴィンターとアリスの物語である。フィリップ・ヴィンターはこの後「まわり道」「さすらい」へと続けて登場する。すべて旅の物語である。

アメリカを旅して自分を見失った男が、小さな女の子とアムステルダムからドイツを旅して自分を取り戻す物語。何故アメリカを旅すると自分を見失うか、というのが問題。「どこへ行っても変わらない」「薄っぺらい」からだと。それでいてジョン・フォードを追悼している。その辺のアメリカに対する憧れと虚しさってドイツ人のあの世代に共通した気分であろうし、それは日本人にもいえるのかもしれない。

ヴェンダースはボグダノビッチの「ペーパー・ムーン」を見て、あまりに似ているため「都会のアリス」を撮影するのを一瞬やめようと思ったという。そこで特に後半の内容を変更した結果、メルヘンのような物語が登場した。うまい子役を使ったほろり調の「ペーパー・ムーン」とはまるで違う映画に仕上がった。
フィリップが絶望したニューヨークやアムステルダムの風景が子供の視点で見るとまるで違うものになる。アリスの視点から一緒に街を見ることで、フィリップは次第に再生されていくのである。ニューヨークの女友達のところで、まるで話を聞かず、自分のことばかり話している彼は結局自分しか見ていない。だから行き詰まってしまう。それがアリスという他者を受け入れることで自分以外のものに目をやっていくことで次第に行き詰まりを打開していっているような、そんな印象だ。

この映画の魅力の半分くらいはイエラ・ロットレンダーが占めている。このアリスがものすごくかわいい。生意気だけど、時々子供らしいところ見せる。ちゃんとやきもちもやくんである。小さい女の子はこのギャップが決め手らしい。大人になって映画の衣装さんになった彼女を「時の翼にのって」で再び出演させたヴェンダース。そういう楽屋落ちは好きだな。

今だったらこいつ犯罪者に即間違われそう。どう見ても娘には大きすぎる女の子を連れて歩いてる浮浪者みたいな30男の旅物語なんて、今だと成り立たない気がする。イヤな世の中になったもんだ。


1988.11.19 フランス映画社配給
1974 ドイツ映画批評賞
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